2014.02.01

vol.13 安曇野産ふじリンゴのオーブン焼き 紅茶のジュレ添え

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エスポワールではこの冬、新しいリンゴのデザートを作っています。長野県のリンゴの評価をする際基準となる、
安曇野産のふじリンゴを使っています。それを丸ごと1個、オーブンで焼き上げるシンプルなデザートです。
なぜこのデザートかというと・・・・・。エスポワールのデザート担当は、長野県安曇野出身で、実家は果樹園です。
数種類のリンゴの他にも、桃やプラム・キウイ・洋梨など様々な果物を作っています。
彼女は、家族が丹精込めて栽培した果物を料理やデザートで使いたいという強い思いがありました。
今回、彼女の実家で一番力を入れて作っているふじリンゴを使いたい。リンゴそのものの味をお客様に味わって
欲しいとシェフに相談したところ、すぐに「やろう。」という返事でした。
そこからは、試作の日々です。リンゴに合うスパイスや白ワインを使ってみたり、冬ならではの薪ストーブで
火入れをしてみたり、その都度シェフにチェックしてもらいながら完成したのがこのデザートです。
オーブンで焼き上げるまでに1時間ほどかかってしまう為、お料理のオーダーをいただくと同時に、このリンゴの
注文も頂いています。料理の準備が始まると、同じタイミングでコース料理の後でも食べられる小振りなふじリンゴが
オーブンに入ります。この時は、芯が抜かれバターを加えた状態です。
テーブルではお客様が楽しく会話しながら、オードブル・メインとお皿が進んでいきます。その頃には、
ふじリンゴは、もともとたっぷり含んでいた果汁がにじみ出し、キャラメルの香りと甘酸っぱい香りがオーブンの外へも
溢れ出てきます。この香りは、いよいよ出番が近づいてきた相図です。
お客様がメインのソースまで召し上がられた後、ついに長い時間オーブンの中で今か今かと待っていたデザートの
瞬間です。メイン料理の皿・カトラリーは片づけられ、テーブルクロスの上はサービススタッフによりデザート用に
改めてセットされます。ついにデザートの時間です。
オーブンで焼かれたことで、透明感が出て味の凝縮を想像させる柔らかそうな見た目に、バニラアイスと紅茶の
ジュレが添えられています。これはお好みで、焼きリンゴと絡めてお楽しみいただきます。バニラアイスを合わせて
みるとリンゴの酸味がまろやかになり、バニラの甘い香りがリンゴの香りに溶け込んで、上品な味になります。
今度は、紅茶のジュレをリンゴにかけますと、温められたリンゴによって一瞬でジュレはソースに変わります。
そのとたん、アップルティーの香りに包まれます。冷たい紅茶が温められるので、香りも一気に広がるのです。
また、アルコールOKの方には、紅茶のジュレにブランデーを加えてお出ししております。
そのジュレをかけた時の香り・お味は是非、エスポワールで体感してください。
実家のリンゴをお客様が楽しんでいる姿を影からこっそり見ているパティシェが、私には印象的でした。
エスポワールでは、スト―リ―のある料理・食材は紹介しきれないくらい沢山あります。
シェフのモットーは、『生産現場を知る事』です。
大変な労力を使って栽培された野菜や愛情かけて育てた牛や豚、野山を駆け巡っていた野生動物。
それらに関わってきた人たちの思いを料理人として皿に表現し、お客様に感じて頂きたいというのがシェフの
教えであり、エスポワールの料理です。
今回ご紹介したリンゴのデザートもまた、特別な『思い』の込められた一皿です。
ご来店のお客様は、エスポワールならではの様々な食材のお話も是非お楽しみください。

ソムリエ 野村 秀也

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