2015.06.22

vol.23 道具の話

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レストランで仕事をしている人達が使う道具というと、調理用具の中でも

料理人の包丁がイメージされると思います。今回は私が使う道具の話しです。
私は2005年にソムリエの資格を取得しましたが、ワインに興味を持ち始めたのが

2003年くらいで、ちょうど信州では長野県原産地呼称管理制度がはじまり、

ワインや日本酒などが注目されるようになってきたころです。
その頃まで私はワインはあまり飲んだ経験すら無かったのですが、

エスポワールでサービスを担当する事になったのがきっかけでした。

接客は全く未知の仕事だったので始めは緊張の余り料理の説明のときに、

息を吸う量と吐く量のバランスがおかしくなってしまい、上手く会話が

出来なかったこともありました。そんな時にシェフから1本のソムリエ

ナイフをいただきました。刃物で有名なドイツのKaiser社のもので、

スクリューの部分と折りたたみの式のナイフの部分は使い込まれていました。

シェフは修行時代の最初の7年間は調理ではなく、サービスを担当していたと
聞いていたのですぐにピンときました。このソムリエナイフはまさしくシェフ

が修行時代時代に使っていたものでした。言葉では言われませんでしたが、

これは「勉強してソムリエになりなさい」とのメッセージだと勝手に

思っていました(笑)
それから10年が経ちますが、シニアソムリエの資格も取得することができ、

今でもこのソムリエナイフを使い続けています。
思い返すとソムリエの実技試験や、数々のお客様の接客を常に

一緒にこなしてきました。また、1923年ミュジニー、1961年シャトーラトゥール、

1936ムルソー ドクターバロレコレクションや1928年マサンドラコレクション

ホワイトミュスカなどの歴史的な銘醸ワインの抜栓もこのソムリエナイフで

おこなってきました。不思議とスクリューの先の感覚が自分の指先の
様に、ワインのコルクの状態を察知してくれます。私にとっては無くては

ならない道具です。私が自信を持ってワインのサービスができるのも、

この「相方」がいるおかげなのです。