2015.10.11

vol.28 古酒の会ワイン(その5)

1955年 シャトーコスデストゥルネル サンテステフ

シャトーコスデストゥルネルは1855年に制定された、ボルドー地方のメドック格付けに於いて、第2級に格付けされた名門シャトーです。『Cos』はガスコーニュ地方の古い言葉で小玉石という意味を持ち、デストゥルネル家の小玉石という名を持つワインです。コスデストゥルネルはメルローの比率が高いため、柔らかさを持ち、サンテステフ村のワインの特徴と言える力強さも備えています。近年では早くからでも楽しめるスタイルに作られていますが、熟成させることでさらにその真価が発揮されます。

コスデストゥルネルといえば、シャトーの建物が特徴的で、東洋の建造物を連想させます。一目でコスデストゥルネルとわかる建物で、ワインボトルのラベルにも描かれています。一説によるとその昔、コスデストゥルネルは新しい市場を開拓するために、赤道を越えてワインの売り込みに東洋に出たところ、ワインが赤道付近の暑さによって味が変化してしまったそうです。しかし、それが中国ではうけいれられ、アジアでコスデストゥルネルの人気が高まり、その出来事に因んでシャトーを今のデザインにしたそうです。(シャトー訪問時に現地で聞いた話です。)

今回の1955年のボトルは、現在のラベルデザインとは異なり、中央のシャトーの絵は同じなのですが、全体的にモノトーンなデザインになっています。このラベルの違いはというと、シャトーでワインを詰めたものか、ワイン商(ネゴシアン)が詰めたボトルかの違いです。ワイン商はシャトーで造られたワインを樽ごと買い取り、熟成後ボトルに詰めて、自社の名前入りのラベルを貼ります。もちろんシャトーの名前も入ります。

有名なところでは、パリのワイン商のニコラ、イギリスのベリーブラザーズ&ラッド、ベルギーのヴァンダーミューレンなどが挙げられ、ラフィット、ペトリュス、シュヴァルブラン、ロマネコンティといった有名銘柄もワイン商の詰めたボトルが存在しています。ワイン商はその目利きにより、樽で買い付けたネゴシアン詰めボトルはシャトー詰めのボトルより優れているものもあると言われています。

ただし、現在ではシャトーもしくはドメーヌ元詰めが主体で、契約により購入元の名前をラベルに表記することはほとんどありません。よって、これらのシャトー名を表記したネゴシアンボトルは、ワインの歴史の中の重要な参考品と言えるかもしれません。

ボルドーにとっても当たり年の1955年。ネゴシアンたちの実力と当時のワイン造りから予想する味わいには自然と期待が膨らみます。

コスデストゥルネル

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