2016.09.23

vol.34 MANCHE A GIOT

エスポワールの店内には様々な調度品が置かれています。このコーナーでも何度か絵画や器などのご紹介いたしました。 今回はエスポワールのエントランスにかけられている額についてのお話です。

この額に入れられているのは絵画ではなく、銀器です。画材屋さんにお願いして銀器のイメージに合わせて額を作ってはめ込んででもらった物です。この銀器はお客さまからもよく「これは何ですか?」と尋ねられることがあります。日本ではほとんど見かけることはできませんが、マンシュアジゴーと呼ばれます。英名にするとBONE

HOLDER といわれ、骨付きモモ肉の骨の部分をこの銀器でつかみ、手を汚さずにお肉を食べたり、切り分けたりするのに使われる道具です。いかにも美食大国フランスならではです。

これは今から14年前の2002年にフランスにて購入したものです。わたしも入社2年目で生まれて初めてフランスに連れて行ってもらったときでした。フランスの町並みと、どこで食べてもおいしいパンに感激したのを思い出します。ホテルの朝食で出てくるクロワッサンがあまりにもおいしく、毎朝朝食を食べ過ぎてしまいました。

フランス研修旅行の最終日に地下鉄で向かったのは、シェフがかねてから楽しみにしていたクリニャンクールでした。ご存じの方もいると思いますが、パリを代表する蚤の市です。西洋の骨董品が数多く集まり、絵画や陶磁器、置物、銀器、照明器具や家具に至るまで、様々な年代を感じさせるものが並んでいました。当時の私にはそれらの価値はまるでわからず、シェフについて見て回っていただけでした。

シェフにはこのクリニャンクールで目当てにしているものがありました。それがマンシュアジゴーでした。エスポワールでも骨付きの野鳥などの食材を扱うことからマンシュアジゴーの小さな物をずっと欲しいと思っていたそうです。しかし、蚤の市を歩き回っても、大きな物や、バラで売られているものは見つけることはできたのですが、シェフが探していた1本もかけることなく揃ったものにはなかなか出会えませんでした。半ば諦めかけていたころ、1件のお店でついに12本すべてそろったものを見つけました。古い革張りのケースに収められ、ベルベット生地に12本並べられた銀器は、高貴な雰囲気と存在感を放っていました。喜びもつかの間。その金額を聞くと予算をだいぶオーバーしていました。しかしせっかくここまで来て出会ったものです。そこから店主とシェフの交渉が始まりました。私はお店の外でシェフが出てくるのを20分ほどで待ったでしょうか(もっと長く感じました…)シェフがお店からでてきました。その手にはマンシュアジゴーの入った皮のケースがありました。シェフの根強い交渉により予算内で譲ってくれたのでした。店主もシェフの熱意に負けたのでしょう。あれから14年。今では大事に額に収め店内に飾っています。(実際使用したこともあったのですが、残念ながら破損してしまったものもあります)この額に入った銀器を見るたびにクリニャンクールのハラハラ感が思い出されます。

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