2019.10.18

vol.36 天然きのこのサヴァイヨンとシャンパンのマリアージュ

今回ご紹介する料理とワインのマリアージュは、天然きのこのサヴァイヨンとシャンパーニュです。天然きのこはジビエと共にエスポワールでは欠かすことのできない食材です。

秋のイメージが強いのですが、早いものは春から初夏に取れる天然きのこもあります。5月頃では、さけつばたけ、アミガサタケ(モリーユ)、6月になるとヌメリスギタケモドキ、7月中旬頃にはヤマドリタケ、アカヤマドリタケ、ヤマドリタケモドキといったフランスでいうセップ茸の仲間が採れます。これらもエスポワールでは旬の食材としてお楽しみいただいております。

今回は5月のきのこ、サケツバタケ、アミガサタケを使ってのサヴァイヨンというお料理をご紹介いたします。

サケツバタケは畑などに生えるきのこでツバの部分が大きくなると裂けてくるのがその名の由来です。香りは控え目ですが味わいは上品な甘味があります。このきのこをソテーして煮込み、出し汁を摂ります。きのこの旨味のでた出し汁に卵黄、バターで作るサヴァイヨンソースを加え、さらに白ワインヴィネガーでまったり感を消してソースを仕上げています。サケツバタケ、アミガサタケの上からソースを流して表面に焼き色ががつくように器ごと焼きます。

この料理に合わせるシャンパンは、マリリンモンローが愛飲したパイパーエドシック社の「パイパーエドシック エッセンシエル ブリュット」です。これは今までのスタンダードなシャンパンに比べて長く熟成をさせています。この熟成期間によって風合いが変わります。

 

                                   

 

瓶内2次発酵が起き酵母が糖分を分解し二酸化炭素(炭酸ガス)とアルコールに変えます。働きを終えた酵母は滓となって瓶底にたまります。その滓と共に熟成させると、酵母が糖分分解時に取り込んだ旨みが徐々にワインに戻されます。これにより複雑な香りと味わいを

持ち合わせます。パイパーエドシック エッセンシエルはフランスと日本のみの限定でリリースされたものです。シリアルナンバー、収穫年、瓶詰めした年、オリ引きした年月が記入されており、こだわりが感じられます。香りは抜栓直後からはっきり感じられ、熟成の長さからイースト香があり、上品な雰囲気を感じます。味わいは

ピノノワール種が多くブレンドされるため、力強さがそなわった味わいと、シャープな酸味により端正な骨格を持つシャンパンです。グラスもフルートグラスではなくワインを注ぐボールと呼ばれる空間が広い方が、よりシャンパンの香りと旨みをを引き立ててくれます。

料理を一口とワインを一口含むと、なんというハーモニーでしょう!含んだ瞬間にサヴァイヨンの濃厚さとほんのりきのこの香り広がり、そこにシャンパンが加わると瞬く間に炭酸ガスにより濃厚なサヴァイヨンの印象が軽くなり、口の中に心地よさだけを残して徐々に消えていく素晴らしい相性です。余韻の上品さは感動を覚えます。このサヴァイヨンは通常のレシピより卵黄の量を増やし、少量のワインヴィネガーを加え、酸味を調整することで重たすぎずバランスの味わいになります。さらにシャンパンのもつ酸味で料理のボリューム感を軽く感じさせるというシャンパンを意識しての1皿です。

食材と人の技術と時間が創り出した味のハーモニーは芸術とも言えるマリアージュで幸せな気持ちにさせてくれます。

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