2013.12.07

vol.11 1957年Chateau Lafit-Rothschild

オールドヴィンテージワインというと、家庭では保管するのが大変ですし、開けるタイミングというのも
難しという方が多く、いつ飲んでよいのか?どのような料理を合わせてよいか?など、飲んでみたいけど
近寄りがたいという方もいらっしゃるのではないかと思います。
エスポワールには、10年くらいのお付き合いになるお客様がいらっしゃいます。いつもはご夫婦で
お見えになるのですが、年に一回ご両親と一緒にお食事を楽しみに来られます。
毎回ワインの方も、様々なものをお選びになるので、私もしっかりご説明が出来るようにと気合が入ります。
先日も、ご家族4人でお越し頂きました。
その2ヵ月前、ご予約のお電話で『57年のシャトーラフィットを両親に飲ませたい』とエスポワールの
中でも最も古いラフィットのヴィンテージワインをご予約されました。


ワインの外観から見てもコンディションはとても良く、ボトル越しの色も綺麗な赤味を帯びていました。
私も良い状態であることを願いつつ、2ヵ月前からパニエ(ワインを寝かせるカゴ)に入れ、当日を待ちました。
いよいよ当日です。お料理はシェフのスペシャルコース。ワインはスタートから57年シャトーラフィットです。
「食前酒や白ワインで酔いが廻ってしまうと味がわからなくなるから」と笑いながらおっしゃっていましたが、
これは、しっかりこのワインを楽しんでいただかなくてはと、より力が入りました。
今回は、抜栓することから見て頂こうテーブルで開栓しました。キャップシールを剥がし、コルクにスクリュを
突き刺します。ここでコルクのコンディションの悪いものは、スクリューの先が触れただけでボトルの中に
コルクが落ちてしまいます。そのような事があると、この演出は台無しになってしまいます。
緊張の瞬間です。スクリューの先をひっかけるようにすると、上手く刺さりました。後はゆっくり引き上げていきます。
完全なノンリコルク(瓶詰された当時のままのコルク)物でしたので、崩れてしまうことを覚悟していましたが、
折れてしまうこともなく引き上げる事が出来ました。
お酒はこの瞬間から目を覚まします。50年以上熟成をしていたとは思えないクリーンな香りと綺麗な赤色で、
腐葉土の香りと赤い木の実のようなフレーバーがありました。テイスティングをしていただき、お客様に
おつぎしていきました。ご両親とワイングラスを傾けながらじっくり楽しんでいらっしゃる姿が、とても印象的でした。
今回は、コルクを引き抜くことができましたが、年号の古いワインほど難義な抜栓が待っていますが、
その後の喜びと感動はより一層です。そして時間が作り出した味わいというのは、私達ソムリエであっても
表現しきれないほど複雑で奥深い味わいです、これは、ヴィンテージの若いワインでは味わえない醍醐味です。
古いワインは保存状態によって、味に差が出てきます。同じ銘柄同じヴィンテージであっても、全く違う
味わいのものもあります。私も様々なオールドヴィンテージワインと関わってきましたが、どれがそのシャトーの
本当の年相応の味かはわかりません。コルクを抜かれた目の前のボトルが、そのシャトーの味わいだと思います。
飲む側が本当にそのワインを味わいたいと思った時に素晴らしい感動と味わいと時間と共に変化する儚さを
感じることができます。
今回の常連様も、本当にこのワインを楽しみたいという気持ちから、食事中も笑顔と会話が途切れず、
素敵な時間を過ごしていかれました。
オールドヴィンテージワインは、タイミングや合わせる料理はもちろん大切ですが、何よりも楽しいという気持ちが
ワインの味をはっきり感じさせてくれますし、雰囲気を盛り上げてくれるものだと実感しました。
エスポワールには、1920年代からのワインもリストに載せております。そのようなワインと共に素敵なお食事をお楽しみください。

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